台風被害
今年の夏は猛暑で雨が全く降らずでしたが、9月になった途端に台風がやって来て雨が続いています。特に関西地方は大変な被害が発生し、毎日テレビで報道されていました。心からお見舞い申し上げます。自然災害の恐ろしさを改めて知らされました。まさに異常気象のなせる業です。今年はいったいどれくらいの数の台風がやってくるのかわかりませんが、農作物の被害は甚大なものになりつつあります。
今年のお米の作況指数
作況指数とはお米の出来具合を示す数値で、10アール当たりの予想収量を平年を100として比較して表わしたものですが、今年は、8月の雨降らずの猛暑も手伝って全国的に100~101で上出来のようです。品種により違うのですが、早場米は台風の影響を受けなかったのでいいはずです。ただ、水不足と猛暑から品質的には必ずしも良いとは言えないと思っています。
稲の高温障害
今年ほど雨降らずでカンカン照りが続くと、出穂(穂がでること)が早まります。また、近年問題になっている高温障害ですが、出穂後の平均気温が 27℃よりも高い場合は白未熟粒の発生が増加することがわかっています。要するに品質が低下するのです。
昨年は8月によく降雨があり、天気もパッとしませんでした。その影響で早場米が良くなかったのです。例を挙げればコシヒカリは振るわなかったのです。ところが去年は9月になってからの天気がすごく良くて晩成品種にとっては好条件でした。例を挙げればキヌムスメなどです。登熟期に好天が続いたので豊作でした。今年のように雨降らずで好天続きでも良くないのですから、自然相手の農業は難しいのです。では圃場の水を掛け流しにして圃場の水温を下げようとすればどうでしょうか?ところが地区全体で水を分け合っている場合はできません。地域によっていろいろな制約があるのです。ですから、できるだけ田植えを遅くにしたりして対応する人がでてきました。この異常気象ですから、臨機応変に対処することがとても重要になってきます。
暑さに強いお米
お米にはかなりの数の品種が存在します。作ろうと思えば作れますが、品質を重要視するならば的を絞って作ることになります。
コシヒカリは比較的全国各地で作られていますが、昼と夜の寒暖差があり、良く陽が当たり、風通しも良ければ高品質のお米が出来ます。その品種にあった風土が必要です。お米の粘り、旨み、艶、冷めた時の味、、、とどれをとっても平均以上で頭一つ抜きんでているのがコシヒカリです。ただ、高温障害に弱く近年泣かされてきました。各都道府県ではこぞって品種改良をし、つや姫、キヌムスメ、などの暑さに強い品種が出てきて、徐々にではありますが市場に受け入れられ伸びています。
お米の味を左右するもの
コシヒカリを例にとれば、魚沼産のコシヒカリが有名です、寒暖の差が大きく、ブランド米として地域の方々の努力も大きく味に影響していると言えます。また緯度が下がっても高地で作っていると昼と夜の寒暖差が大きく、お米の旨みが違います。これが第一条件。そして何といっても作り方です。施肥の時期、手入れの具合、堆肥の使い方、土造りと手が掛かるのですが、これが大事です。とっても大事です。刈り取るタイミングもあるし、乾燥の仕方も影響します。どこそこ産だから旨いというのは、ひとつにはそこの風土条件がいいことが挙げられます。そして作る人の努力がお米の味を守っているのだと思います。地域を挙げて大変な努力をして実を結んだからなのだと思います。同じ場所で同じ品種を作り、毎年向上心を持って努力していくと,お米の味が数段良くなるのを経験しているので、よくわかります。
新しく農業に参入しようとする時
近年では、都会での会社勤めを見切り、地方で農業を営もうとする人が増えてきました。しかし、まだまだ極わずかの人たちです。夢と希望を持ってIターン、Uターンするのです。私もその一人です(Uターン)。最初は失敗の連続かもしれません。ですから受け入れ態勢を万全に整えて各地域が待っています。手取り足取り教えてくれるのです。競争社会においてはまず考えられませんが、地方にはそれがあります。軌道に乗るまで道筋を示してくれるのですから有難い事です。後は努力です。相手は百戦錬磨、その上気まぐれこの上ない大自然が相手です。心が折れることなど一度や二度ではありません。自然を受け入れ、大いに反省し、目標に向かって自分を変えていく覚悟と努力が要求されるのです。でも楽しいのです。自然と会話ができるようになると自分の事業も本物になってきます。