キヌムスメは9月の日照具合が大事
お米の品種は相当数ありますが、早生型と晩成型に分かれます。もちろん最近の品種改良によりその間の品種も存在しますが、大きく分けると早いか遅いかです。毎年気象条件が一定せず、それぞれにいい時と悪い時が交互にやって来ているような気がします。去年は9月が好天続きで晩成型には好都合でした。しかし、今年の9月は長雨続きで良くありません。登熟具合が悪く、また、長雨により、稲こうじ病の心配が出てきているのです。終わり良ければすべてよしではないですが、肝心の仕上げ時期が良くないといけません。自然が相手だからとあきらめることはできないのが人情です。
大自然との駆け引き
いろいろ手立てはあります。ありますが、1年前から予想して対処しないといい結果はでません。経験がものをいうのです。こうなったらこうする、でなかったらこのように対処すると前もって準備することが大事です。ここの所が上手く対処出来た時に、身体を快感が突き抜けるのです。大げさに言うと「自然に勝った」と自己満足の世界にひたれるわけですね。毎日がきつい労働ですから、何か一つ楽しみというか駆け引きのようなものがあると、それが励みになることがあります。
自分の仕事を楽しむ
決して楽な仕事ではないですが、楽しんですることが出来れば米の味も上がります。私の好きな諺に「着眼対局、着手小局」という言葉があります。目標を立てたらそこから下へ降りてきて、今何をなすべきかを問うたものです。出は、中国の戦国時代末の思想家”荀子”の言葉で、私の座右の銘になっています。タイミング良く種を撒いておいて有事に備えることは、いろんなことに通じるのではないでしょうか。ですから、来年の稲作りは、稲刈りが終わってから勝負が始まります。来年の事を言うと鬼が笑うと言いますが、1年先の結果を想像しながらするのが秋の作業です。
晩成型の方キヌムスメ
キヌムスメは晩成型の肥やし食いの品種で、肥料を良く吸収し、良食味のお米でコシヒカリと同等の旨み、香り、粘りもあり大変美味しいお米です。コシヒカリに比べると若干あっさり目の感じがしますが飽きの来ない味です。背丈はコシヒカリより少し低く、葉茎もしっかりしているので倒伏に強く、また高温障害に強い品種です。ここ島根県の推奨品種で、中国地方では栽培面積を伸ばしている人気の品種で、お隣の鳥取県産キヌムスメは特Aのランクに入る程全国で評価が高いお米です。私はこの種籾を作っているのです。
キヌムスメは10月初旬が刈り取り時期
タイミング悪く超大型の台風がやって来ていますが、キヌムスメなら倒伏の心配はコシヒカリ程ではありません。倒れないように作っているので、そう心配はしていませんが、むしろ台風後の天気の方が気になります。幸いに予報は晴れ続きで、爽やかな秋晴れがやってくるようです。今年は、圃場の水を落とすタイミングが計れないほど雨がよく降りました。そのせいで9月初旬には水を入れないようにしたのですが、雨が良く降ったので圃場は多少ぬかるんでいます。ぬかるみを歩きながら、ヒエなどの雑草や少し出た稲こうじをハサミで摘んで歩く作業は足腰に堪えました。既に作業も完了し、後は稲刈りを待つだけです。種籾なので、県の指定業者しか刈り取ることが出来ません。厳重な管理の下で行われているのです。
黄色に色付いてきた稲
9月下旬頃からやっと黄色に色付き始め、刈り取りを待つだけです。コシヒカリよりも1か月長く天気予報を気にし、圃場を歩いて管理することが求められるのでたいへんですが、県との契約で手が抜けません。作った籾が来年のキヌムスメになるわけで、その責任を感じて作業しています。年に4回検査があり、チェックが入りますが、特に圃場内の稲と稲の間に生える雑草は無くて当たり前で、生えていれば全て手て抜き取りです。肥やし袋に50~80袋抜いて歩くこともあるので、かなりきつい作業です。
今年の結果は刈り取り後の検査結果次第
種籾としての出来は検査結果が出てみないと何ともわかりませんが、今年は肥やしが足らなかったという反省があり、気になるところです。刈り取りが終わると来年に向けての勝負が始まります。